Friday, June 24, 2011

鏡よ鏡、この世で一番美しいのは僕ですか

夜に乗る電車と地下鉄に共通する事は窓やドアが鏡の様に反射する事だ。立つ位置によってガラス越しに車両全体が把握できるので、スパイになった様な気分になる。口を死んだ様に開いて眠るサラリーマンやマシンガン並みの速さでメールを打つ高校生。気付かれずに乗客の姿をクールに観察するのが私の暇つぶし手法だ。だが、そんな冷静さをイッキにぶち壊す奴らがいる。

奴らは電車に乗ってくると、まず反射した自分に挨拶を交わす。頭は前かがみに20度下がり、目線は上目使いでキリットした「決め顔」。つり革を片手で掴みながら、あらゆる角度で自分の顔をチェックする。そして、空いている方の手で前髪を親指と人差し指で器用に整える。 一駅分程奴らのグルーミングは続く。やっと終わったかと思えば、なんと次は乗客が自分のかっこいい姿に気付いているかを確認し始めるではないか。体の位置を変えながら、顔を向けてくる。ほんの一瞬目が合う時、私の手は拳になる。 再び奴らの目線は窓に戻り、ゆっくりと指が前髪の方へと移動し始める。

「その指をへし折りたい。」

自分の外見に惚れ込む事は結構な事だが、通勤中に美貌を確認する奴らの姿はなんとも女々しい。だいたい、前髪をさっきから何度も触っているが、全く変わっていない事に何故気付かない。何故人が大勢いる場所で平然と自分の身だしなみを直せるのか。そして、何故そこまで自意識過剰なのだろう。

男と言えば強くて単純でロマンチスト。だけど、いざと言う時、頼りになる生き物のはず・・・だった。しかし、現代を生きる奴らはギリシャの神話に登場するナルシサスの様だ。美少年のナルシサスは池に反射する自分の美しさに見とれてしまい、その場所から離れられないと言う話だ。 ナルシサスは今後増え続け、「男気」はやがて死んでしまうのだろうか。

最近の女は女性らしくない、等と言う男もいるだろうが、その言葉をそっくり返す。
男なんだから、もっと男らしくしろよ

No comments:

Post a Comment